
『鍾馗夢中捉鬼之図』(月岡芳年『

(ウィキメディア・コモンズから流用)
幕末から明治初にかけての浮世絵師 月岡芳年によって描かれた鍾馗。
もちろんいろいろな文献にあたって、唐時代の官僚の衣装を再現していると思われます。
鍾馗は官吏登用試験の「科挙」に落ちて自ら命を絶っており、官吏になったことはないはずで矛盾しているのですが、
憧れの衣装を纏って玄宗皇帝の夢枕に現れたのでしょう。
そのあたりの経緯は諸説あるようですが、こちらに詳しい記事があります。
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この鍾馗さんは瓦鍾馗としては極めて写実的で、先例にとても忠実に作られているが、こういう鍾馗さんは例外。
幕末〜明治にかけての、各地で瓦の鍾馗が盛んに作られていた頃、職人は今とは違って鍾馗さんの絵姿を入手することも難しく、想像力を膨らませて鍾馗さんを形作ったのだと思います。
1.足
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古くて、出来の良い鍾馗さんですが、なぜか裸足になってしまいました。
(左:


これらも裸足鍾馗さん。
2.結び目
けったいな造形がわかりやすく現れるのが腰紐の結び目。そんなに想像力を働かせる余地はないようにも思うのですが、変なのがよくいます。
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素朴ながら、細かい装飾を随所に散らして、とっても一生懸命作った感じがいい。
結び目は巨大で、結納の水引みたいにピンと立っている。
(左:


バックルと化したり、巨大化したり。
3.ひげ
目の周りや額までひげに覆われています。この魁偉な容貌が災いして科挙に失敗したと言われる、鍾馗のトレードマークなのですが。
(左:


(左:


頬や顎がつるんとして、後ろから髭の生えている鍾馗さんは非常に多いです。実際にこんな生やし方をしている人がいたら、かなり変だと思う。
ここに取り上げたのはごく一例です。
想像力全開・暴走鍾馗さんがいかに多いかは、拙サイトでご確認ください。
4.The ultimate
そんな中でも筆者がチャンピオンだと思うのが、カバーにも掲載したこちらの鍾馗さんです。
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説明は不要でしょう。ディテールをお楽しみください。
鍾馗さんも海の向こうの日本で、こんな姿にされるとは、そしてそれを見つけては喜んでいる変人がいるとは
想像もしていなかっただろうなー。
今回登場した鍾馗さん














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Kite 改め 小沢正樹
鍾馗を尋ねて三千里
鍾馗博物館

週末のたびに関西方面へ遠征し、民家にひそむ鍾馗さんに望遠レンズを向けてます。
不審尋問には笑顔とポケット版鍾馗ファイルで対抗するも、追い払われることもしば
しば。