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すごいお金をかけた映画の話

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最近はインド映画がきてます! ボリウッド映画と言って、ハリウッドよりもお金を投入する映画も少なくありません。37億円を投入したインド映画『ロボット』は日本でも話題でした。しかし!お金をかけたからと言ってイイ映画ができるとは限りません。

■『クレオパトラ』の転落人生

映画史に残る失敗映画と言えばこの『クレオパトラ』です。主演は、当時絶世の美女とされたエリザベス・テイラー。エリザベス・テイラーに世界三大美女のひとり、クレオパトラを演じさせて、華麗なる史劇を展開しようという企画です。

企画自体は悪くないですよね。彼女は100万ドルのギャラで契約。映画が企画されたのは1958年、予算は300万ドル(当時の換算で約14億円)でした。この時点で破格の予算です。

■脚本なし! 予算は倍の600万ドルに!
ところが、ここからがいけません(笑)。

撮影開始時に脚本ができあがっていませんでした。仕方がないので、撮影しながら脚本は作るという場当たりな対応で、取りあえずゴー。まずはハリウッドに撮影セットの建て込みを始めます。

しかし! 「海外にセットを作った方が税金が安く済むよ」という余計なアドバイスをした人がいて、作りかけだったセットを捨ててロンドンに移動します。

ロンドンに行ってみると、セットの建設予定地が「これ狭くて入らないかも」ということが判明。前もって土地の広さを確認していなかったことにも驚きますが、その後の対応にはのけぞります。「でも、まあやってみるか」とセットを建て始めたのです。

ここまでのくだりで1960年になっており、予算は倍の600万ドルに上方修正(笑)。ちなみに脚本はまだできていませんでした。

■予算を3倍の900万ドルに!

1960年の夏に脚本が完成して秋から撮影開始。ところが主演女優のエリザベス・テイラーが高熱でダウン。進まなくなります。そうこうするうちに「やっぱり狭くてダメだ」ということになって、ロンドンから撤収決定!

予算は3倍の900万ドルに上方修正(笑)。ついでに監督もクビになって、新しくジョゼフ・マンキーヴィッツが監督に就任します。この監督のすえられ方も大問題でした。エリザベス・テイラーのお気に入りだったのです。

いわゆる情実人事ってやつですね。結果から言えば、マンキーヴィッツは監督を引き受けるべきじゃなかったのです(笑)。

マンキーヴィッツ新監督は「ゼロからやり直しだ」と考えたので脚本もやり直しになりました。ここでエリザベス・テイラーが肺炎で痛恨の入院! 撮影期間がめちゃくちゃになったので、押さえていた他の俳優の契約拘束期間が終了。

エリザベス・テイラー以外の配役が全とっかえになります。

■さらに1,400万ドル追加!

仕方がないので、予算を新しく1,400万ドル積むことになりました。もちろん20世紀FOXはこれで倒産寸前に転落。いやあ映画制作って怖いですね。

で、1961年の秋から撮影を始めようとしましたが、今度も脚本が間に合いませんでした。仕方がないので監督のジョゼフ・マンキーヴィッツが撮影しながら脚本を書きました。死ぬほど働いたマンキーヴィッツは何度もぶっ倒れます。

脚本がないので、場当たり撮影のため、進行はオシにオシて、結局750万ドルも余計にかかりました。これでも制作は終わらなかったのです。

原因は恋です(笑)。エリザベス・テイラーが俳優のリチャード・バートンとつき合い始めたのです。これは「世紀の恋愛」と言われました。制作終盤のこの時期に、恋に落ちたエリザベス・テイラーが撮影所に来なくなってしまいます。

監督は心労でドラッグに逃げるようになりましたが最後までなとか踏ん張りました。

ここでプロデューサーのウォルター・ウェンジャーがクビになります。彼はそれまではハリウッドを代表するプロデューサーでしたが、この映画でキャリア終了。

■ついに完成! 結局10倍のコスト(涙)

そして1962年夏についにクランクアップ! 企画がスタートしてから4年。最初は300万ドルでスタートして結局総製作費3,111万5,000ドル(当時換算で約150億円)で完成!なんと最初の予算の10倍のお金を突っ込んだのです!

映画の神様はこの映画にほほ笑みませんでした。お客さんが来なかったのです。濃い映画ファンなら知ってる話なんですが、このクレオパトラの転落は映画史にさんぜんと輝いています。

■コッポラの転落制作『地獄の黙示録』

あんまり完成しないので、現場で監督が気がヘンになりそうだった映画というと『地獄の黙示録』があります。監督は『ゴッドファーザー』シリーズで有名なフランシス・フォード・コッポラ。

ちなみに地獄の黙示録はベトナム戦争の映画ですが、撮影自体はフィリピンで行われました。企画が企画なので、米軍がまったく協力せず、仕方がないのでフィリピン軍に協力を頼みました。せっかく作ったセットが台風の直撃でぶっ壊れて立て直し。

主役のマーロン・ブランドが言うことを聞かないので全然撮影が進まず。コッポラは脚本を毎日書き直しつつ撮影。ついに倒れます。

結局1,200万ドルの予算で始まった企画なのに3,100万ドルもかかりました。

コケたら映画会社もコッポラも破産でおしまい!でした。ところが映画の神様はコッポラを見放しませんでした。死にそうになりながらコッポラが撮ったフィルムには、物語はよくわからないながらも異様な迫力が宿っており、興行成績は世界的な大ヒット!
とにかくヒドイ目に遭う映画というのは一定のパターンがあるようです。

●脚本もできてないのに撮影を始める
●とにかく大規模なセットを建てる
●しかもそのセットを何度も建てる
●かつそのセットにはあまり意味がない
●主役の俳優(女優)がビッグ
●しかも言うことをきかない
●監督に妙な自信がある
●しかもその自信がおかしい

最近ではCG技術が発達し、大規模セットを建てるなんてことはあまりありません。すごい予算をかけた映画がなくってちょっと残念ですね(笑)。

(谷門太@dcp)

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