

もしも乾燥した日が続いたらどうなるのか?鼻やのどの粘膜が炎症を起こし、感染症の危険が高まる。
逆に多湿になれば発汗を妨げ熱中症を引き起こす。湿度が85%を超えると気温34℃でも体温の限界に達し、人間には危険な環境に変わるのだ。
■湿度100%で乾燥?
気象情報に使われる湿度は相対湿度で、蒸発できる最大の水分量に対し、実際に存在する水蒸気量を%で表した値だ。前者は飽和(ほうわ)水蒸気量と呼ばれ、1立方メートルの空気に含むことができる水の重さ(g)で表される。日常的な温度の飽和水蒸気量(g/立方メートル)を挙げると、
・-20℃ … 0.882g/立方メートル
・0℃ … 4.85 g/立方メートル
・20℃ … 17.2 g/立方メートル
・30℃ … 30.3 g/立方メートル
・90℃ … 418 g/立方メートル
だ。気温20℃・湿度50%は、1立方メートルの空気に17.2×50%=8.6gの水蒸気が含まれることを意味する。
水蒸気量は気温にともなって変化する。30℃・80%なら30.3×80%=24.2gの水蒸気が存在し、この空気が20℃に冷やされると上限が17.2gに引き下げられ、差し引き7gは雨や水滴に戻されてしまう。高温多湿な夏に、夕立が多いのもこのためだ。

対して乾燥注意報の基準は地域によって異なり、

数値だけを見れば、乾燥注意報が発表された時点ですでに「健康上あまりよろしくない状態」と解釈すべきだ。
今年1月は、31日中24日間も乾燥注意報が発表され、2月には最小湿度13%を記録しているから、非常に望ましくない環境で過ごしたことが分かる。
乾燥した場所でも人間は生きられるのか?平成25年・理科年表によると、もっとも湿度の低い場所はエジプトのアスワンで、年平均はたったの26.2%だ。
月平均では6月が最小の16%、最大の12月でも42%足らずだから

年間降水量もわずか3mmのアスワンは不毛の地にしか思えないが30万人近くの人が暮らしている。水分補給を怠らなければ、乾燥した空気が直接害を及ぼすことはなさそうだ。
低湿で警戒すべきは感染症だ。インフルエンザに代表されるウィルスを吸い込むと、気道の線毛(せんもう)が追い出す仕組みだが、乾燥は線毛運動を低下させウィルスの排除を鈍らせる。
加えてウィルスは低温と乾燥を好み、湿度20%・22℃でも生存率は70%にも及ぶ。冬にインフルエンザが流行するのはウィルス好みの低温/乾燥に加え、線毛運動の低下が重なるためだ。
やかんや加湿器で湿度を高めるのがもっとも簡単な対策だが、低温になると効果がないというデータもある。
11.5℃では湿度100%、21℃で54%程度でも口や鼻の粘膜は乾燥するとされた、驚きのデータだ。
湿度100%でも乾燥ではあまりにも理不尽だが、粘膜の湿り具合は発汗と連動し、粘膜がうるおうかは身体の都合で決まるので、空気中の水分は補助的にすぎないようだ。
年末に加湿器を新調した矢先だが、ダンベルを買えば良かったと後悔している。
■危険な高温多湿
乾燥とは反対に、多湿になるとどうなるか?これも理科年表によると、オレゴン州・ロバーツフィールドが最高の87%で、日本の全国平均よりも15%ほど高い。梅雨の蒸し暑い日でも80~90%ぐらいだから、87%では一年中カビに悩まされそうだ。
多湿な環境は体温を上昇させる。発汗は汗の蒸発で体温を下げる働きだが、高い湿度はそれを妨げてしまうのだ。
湿度85%では約34℃が人間の限界で、さらに気温が上がると体温は上昇の一途をたどる。
体温よりも3℃も低いのに、湿度が熱の発散を邪魔するのだ。比較的乾いた湿度45%なら42℃ほどまで耐えられるのに、40%増えた水蒸気が7℃もの温度差を生む。
身体に熱がこもると熱疲弊(ひへい)や熱射病につながるので、高温多湿は危険な環境だ。とくに35℃以上では10%の湿度増が+2~2.5℃に相当するというから、猛暑に向けて湿度計を用意するのが良さそうだ。
■まとめ
ロバーツフィールドの年平均気温は26℃。不快指数77.3で、年間を通じて65%の人が不快に感じる気候だ。
その地にあるレッドモンド空港の利用者は毎月3万人を超す。言い換えれば、不快感に満ちた2万人弱が集う場所だ。くれぐれも事故が起きないよう、エアコンは強めに設定していただきたい。
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